「東京と大阪(関西)の笑いの違い」はたびたび話題になりますが、実データに基づいて議論されたものは少ないように思います。
今回は、以下のような実データに基づき、その違いを考察していきます。
・個々の芸人の例
・賞レースの結果
目次
1 大阪で売れてから東京で売れるまでに、時間がかかった芸人
まずは、大阪では早くから有名だったが、東京で売れるまでに長い時間を費やした2組の芸人を見ていく。
彼らの何が変わったことで東京でブレイクしたのかがわかれば、何かわかることがあるかもしれない。
1.1 千鳥
関西では2004年頃から天下を獲っていたが、東京のバラエティに定着するまでにかなり時間がかかった。
東京でも「売れた」と言えるのは2010年代初頭以降か。
彼らにとって、東京で売れ始める直前の大きな出来事といえばTHE MANZAIでの躍進である。
2011年の3位に始まり、2012年・2013年は2年連続準優勝に輝いた。
芸風がバレているため不利と考えられた賞レース(しかも全国レベルの漫才頂上決戦)で、3年連続ベスト3という離れ業をやってのけたのだ。
ノブのツッコミの「クセがすごく」なった(=他のツッコミ芸人にはない表現の仕方をするようになった)のもこの頃か。
1.2 かまいたち
関西では、2007~2008年頃に各種賞レースで立て続けに表彰を受ける。
それとほぼ同時期にテレビでも活躍するようになった。
(当時関西に住んでいた筆者も、ネタ番組を中心によく見た記憶がある。)
ただ東京進出まではえらく時間がかかり、2018年4月にやっと進出という運びになった。
かまいたちの場合、東京で売れ始める直前の大きな出来事はやはりキングオブコント2017※。
にゃんこスターのインパクトを振り切り、堅実なネタでキングを掴み取った。
ちなみに彼らは、それまでも全国区の大きな番組へ出演経験があった(2012年のすべらない話に山内が単体で出演・歌ネタ王決定戦2016優勝・キングオブコント2016 3位※)が、それだけでは東京進出に不十分だったようだ。
※個人的感想を、本ブログの別記事で書いています。良ければご覧ください。
キングオブコント2017 感想&個人的採点①
キングオブコント2016 感想&個人的採点①
この2組の例を見る限り、「全国区の賞レースで結果を出せば、関西芸人でも東京で売れる」ように思える。
2 賞レースの結果と、関西芸人の飛躍との関係
先ほど「全国区の賞レースで結果を出せば、関西芸人でも東京で売れる」という仮説が立ったので、続いてこの仮説が正しいのかを検証していく。
ここでは全国区の賞レースの結果一覧をまとめてみて、順位と関西芸人の売れ方に関係があるのかを見てみる。
対象とする賞レースはTHE MANZAI・M-1グランプリ・R-1ぐらんぷり・キングオブコントの4つとし、いずれも2011年以降に絞って確認する(それ以前を含めると数が多すぎるため)。
なおすべての順位を表示するのではなく、それぞれの賞レースの決勝で2回ネタをやった芸人(=M-1でいう最終決戦進出相当)のみを対象とした。
ただしキングオブコントについては、全組が2回ネタをするルールの年があったため、全ての年について4位までを対象とした。
また芸人名を以下のように色分けして表示した。
ここでの売れる/売れないの区別は筆者の判断に基づくが、TV番組出演数・東京での知名度を考慮したものとなっている。
・赤字 … 関西芸人(=もともと関西を拠点にしていた芸人で)のうち、賞レース後1年間のうちに東京で売れ始めた芸人
・青字 … 賞レース後1年間のうちには東京で売れなかった芸人
・黒字 … 関西以外の芸人、もしくは賞レース当時すでに売れていた関西芸人
■THE MANZAI
■M-1グランプリ
■R-1ぐらんぷり
■キングオブコント
これを見る限り、確かに賞レースをきっかけに東京でも売れた関西芸人(赤字)は何組かいた。
ただし東京で売れるための必要条件はとても厳しく、「賞レースで2位以上に入ること」のように思える。
「2位以上に入れば必ず売れるか」というとそうでもないが、ある程度の確率はあるようだ。
一方、3位だとほぼ確実にブレイクしない(ただし千鳥・ゆりやんレトリィバァなど、翌年も3位以上をキープすることで、合わせ技的にブレイクした例はある)。
余談だが、アキナは3位になったことの印象すら全く残っていない(当然、東京でブレイクはできていない…)。
>>【続き】東京と大阪(関西)の笑いの違い(後編: 賞レースはイマイチなのに売れた芸人!?)
>>【関連記事】芸人はどうやってネタを作るのか? ~笑いの理論についての参考書5選~